僕の彼女は元カレクズ男のオナホでした
包まれたい背徳感がほしい非日常感がほしい
読んでいたところから開きました
四人で泊まる、という話になったとき、全員がその意味を分かっていた。
分かっていて、誰も言葉にしなかった。言葉にしないまま、部屋の予約だけが取れていった。
前の日に、私は彼に一度だけ確認した。「本当にいいの」。彼は少し黙ってから「決めごとを作るなら」と言った。それで決めごとを作った。
四人のうち一人でも「やめ」と言ったら全部終わり。同じ部屋から出ない。写真は撮らない。翌朝、誰も昨日の話をしない。四人でそれを読み合わせて、それぞれが「いい」と言った。言い終わったあと、部屋がやけに静かになった。
始まりは、二組のままだった。
同じ部屋の、別々のベッド。灯りを落として、それぞれが自分の相手といる。それだけのはずだった。
聞こえてくるのが問題だった。
向こうの布が擦れる音。息を殺しきれていない声。肌を打つ音に混じって、水音が聞こえた瞬間、私の中が勝手に締まった。彼にも分かったらしくて、奥を突く手を止めずに耳元で訊かれた。
「聞こえてる?」
「……うん」
「聞いてると、締まるね」
言われて、否定できなかった。否定できないまま、彼が奥まで押し込んできて、私は声を殺すのをやめた。殺すのをやめた瞬間、向こうの声も大きくなった。
灯りを少しだけ上げたのは、向こうの彼のほうだった。
「見えたほうがいいと思う」
誰も反対しなかった。反対しないことが、そのまま返事になった。
見えてしまうと、もう戻れなかった。向かいで、私の彼ではない人が、私の友人の乳首を後ろから摘まんでいる。摘ままれた瞬間に友人の背中が反って、繋がっているところが丸見えになった。反った瞬間に私も息を吐いていて、自分がそれに合わせて呼吸していることに気付いた。
呼吸を合わせているのは私だけではなかった。四人の息が、いつのまにか同じ速さになっていた。四つの呼吸が揃うと、部屋がひとつの生き物みたいになる。そのなかで、自分がどこからどこまでなのかが曖昧になっていった。
境目が消えたのは、誰かが手を伸ばしたからだった。
私の手に、向こうの彼の手が触れた。振り払わなかった。振り払わなかったことを、私の彼が見ていた。見られながら、私は他人の手に指を絡めた。
そこからは、順番も配置も覚えていない。
後ろから根元まで挿れられながら、前で友人と目が合った。彼女の顔が、私の知らない顔をしていた。普段の彼女は、こんなふうに口を開けない。開いた口の端から唾が伝っている。そのギャップで、私の奥が勝手に締まった。締まったのが伝わって、後ろの腰の動きが速くなった。
途中で一度、誰の手がどこにあるのか分からなくなった。乳首を挟んでいる手と、クリを擦っている手と、髪を掴んでいる手が、それぞれ別の人のものだった。数えようとして、数えるのをやめた。やめた瞬間、頭のなかが白くなった。
いちばん長かったのは、四人が同時に止まった時間だった。
誰かが「ちょっと待って」と言った。全員が止まった。決めごとが効いているのを、四人とも確かめた。息を整えて、水を飲んで、それからもう一度始まった。
止まれるのだと分かってから、私は自分の限界を測るのをやめた。
子宮口だけを短く叩かれ続けて、腰から下の輪郭が消えていく。いっている最中も抜かれない。締めつけている中を構わず擦られて、痙攣が引ききる前に次の波が乗ってくる。声が自分のものに聞こえない。何度目かも分からないところで一度噴いて、シーツの色が変わったのを、四人とも見ていた。
朝、四人で朝食を食べた。
決めごとどおり、誰も昨日の話をしなかった。話さないのに、コーヒーを注ぐ手つきだけが、昨日より近かった。
帰りの電車で、彼が言った。
「気まずい?」
私は少し考えて、首を振った。
「思ってたより、ちゃんとしてた」
彼は笑って、それ以上は訊かなかった。次があるかは、まだ決めていない。決めていないけれど、私はあの四つの呼吸が揃った瞬間を、たぶんずっと覚えている。
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今夜のものを見るこの物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。