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見られる緊張が好き恥ずかしさが効く非日常感がほしい
読んでいたところから開きました
三人目の役割は、はじめから決まっていた。
「見てるだけ」
そう言い出したのは、その人自身だった。触らない、口も出さない、ただ椅子に座って見ている。それでいいのか、と私が訊くと、その人は「それがいい」と答えた。
決めごとは四つ。誰かが「やめ」と言ったら全部終わり。見ている人が加わりたくなったら、必ず口に出して確認する。写真は撮らない。翌日は誰もこの話をしない。
三人で読み合わせたとき、私は自分がいちばん緊張していることに気付いていた。
椅子は、ベッドの正面に置かれた。
正面、というのが効いた。斜めでも横でもなく、真正面。目を開ければ必ず視界に入る位置に、服を着たままの人がひとり座っている。
始まってしばらく、私は目を閉じていた。閉じていれば見られていないことにできると思った。できなかった。閉じると、視線だけがよけいに濃くなる。どこを見られているのかを想像してしまう。想像した場所が、その通りに熱くなる。
「目、開けたら」
彼が耳元で言った。私は首を振った。
「見られてるの、いやなの?」
「……いやじゃない」
「じゃあ、開けて」
開けた。目が合った。その人は何も言わずに、ただ足を組み替えただけだった。それだけで、私の中が締まったのが自分で分かった。
いちばん効いたのは、触られていないことだった。
彼の手はずっと私に触れている。乳首を転がされても、中に指を入れられても、触れている手には慣れる。慣れるから、快感には天井ができる。
見ている人の手は、一度も来ない。来ないから、そこには天井がない。次に来るかもしれないという状態が、ずっと解除されない。乳首を吸われているあいだも、指を出し入れされているあいだも、私は半分、あの椅子のほうを意識していた。意識するたびに中が締まって、締まったのを彼に指摘された。
「そっち見てるでしょ」
「……見てない」
「見てるよ」
見ていた。見ていることを見抜かれて、そのことがまた恥ずかしくて、恥ずかしさの行き先が全部下に落ちた。
一度目は、目を合わせたままいった。
クリを舌で転がされながら、中に入れた指を折り曲げられて、腹側を掻かれる。いくところを、脚を開かされたまま真正面から見られた。顔を隠そうとして、手首を掴まれた。掴まれたまま、痙攣しているところまで全部見られた。
「隠さないで」
言ったのは、彼ではなかった。椅子のほうから聞こえた。その人が声を出したのは、始まってから初めてだった。
声を聞いた瞬間、二度目が来た。何もされていないのに、声だけで来た。自分でも意味が分からなくて、私はしばらく震えていた。
その人が椅子から立ったのは、ずいぶんあとだった。
「触っていい?」
決めごとどおり、口に出して確認された。私は頷いた。頷いた声が、自分でも聞いたことのない出方をしていた。
来た手は、拍子抜けするほど軽かった。
指先が、鎖骨から乳首のふちを、触れるか触れないかの強さで下りていく。先端には触れない。周りだけを、ずっと弱いまま。散々見られたあとの体には、その弱さが暴力に近かった。乳首だけが勝手に硬くなって、空気が動くだけで感じるようになる。
「もっと」
「もう少し待って」
待たされた。待たされているあいだ、彼のほうは奥を突き続けていた。強いのと弱いのが同時にある。強いほうには慣れる。弱いほうには、いつまでも慣れない。慣れないほうに神経が全部集まって、乳首を触られてもいないのに中がひとりでに収縮した。
最後は、二人がかりだった。
見ているだけだった人の指が、やっと本気で入ってきたとき、私は自分の声が部屋のどこから出ているのか分からなくなった。
下からは彼が奥を突いていて、そこへ二本目の手がクリを挟んで擦る。中と外を別々の人間に責められて、繋がっているところから溢れたものが太ももを伝った。伝ったのを、椅子にいたときと同じ目で見られている。
「ずっと、こうしたかった」
「……なんで、しなかったの」
「見てるほうが、たぶん君に効くと思ったから」
正しかった。悔しいくらい正しかった。
終わったあと、私は椅子のほうを見ていた。
誰も座っていない椅子が、ベッドの正面に残っている。それを見ているだけで、まだ体の芯が疼いていた。
「その椅子、捨てられない」
言ったら、二人に笑われた。笑われたけれど、二人とも椅子を片付けなかった。
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今夜のものを見るこの物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。