CIRCLEMATE サークルメイト
包まれたい耳で感じたい言葉で責められたい
読んでいたところから開きました
「目、閉じて。開けたら、やめる」
素直に閉じたのは、彼女の声が、いつもより一段低かったからだ。喉の奥に落ちた、私だけが知っている声。
視界を失うと、部屋の音が急に増える。エアコンの唸り、シーツの擦れ、彼女が背中側に回る気配。そして、右の耳の穴に、直接、息がかかった。
「聞こえる?」
近い。近すぎて、声というより空気の振動だった。子音がほどけて、意味になる手前の音が、そのまま鼓膜の内側で圧になる。それだけで、うなじの毛が逆立って、脚のあいだが、ひとりでに湿った。まだ、指一本触れられていないのに。
「わたしが今から言うこと、全部、あなたの体でされてると思って聞いて」
彼女は、本当に何もしなかった。触りもしない。ただ、耳のすぐ横で、言葉を置いていく。
「今、あなたの鎖骨に舌を這わせてる。ゆっくり、下におろしてる」
言われた場所が、触られてもいないのに熱くなる。想像が、指より正確に、そこをなぞる。
「胸の先、もう硬くなってるでしょう。口に含んで、舌で転がしてる。……ほら、腰が動いた」
動いていた。声だけで、私の腰は勝手に浮いていた。恥ずかしいのに、止められない。彼女の声が、私の体の地図を、ひとつずつ塗り替えていく。
「脚、開いて」
これは想像じゃなく、命令だった。開いた。開いた自分に、また体が疼く。彼女はそこには触れず、ただ、耳元で続けた。
「今、指を、あなたの一番濡れてるところに当ててる。まだ、押さない。表面を、なぞってるだけ。……分かる? 自分がどれだけ濡れてるか」
分かった。太ももの内側まで伝うのが、自分で分かった。声だけで、下着はもう用をなしていなかった。
「挿れてほしい?」
「……っ、う、うん」
「じゃあ、言葉で。どこに、何を、どうしてほしいか」
言った。目を閉じたまま、自分でも聞いたことのない、はしたない言葉を、順番に。言うたびに、体が言葉に追いつこうとして、勝手に締まる。
言い終えても、彼女はまだ触れなかった。
かわりに、彼女自身の呼吸が、耳のすぐ横で乱れはじめた。彼女も、自分の言葉で昂ぶっていた。吸って、止めて、震える吐息。その音を聞いているだけで、私の中心は、触られてもいないのに、達する寸前まで来ていた。
「わたしも、もう、濡れてる」
その一言が、引き金だった。
彼女の指が、やっと、私の中に沈んだ。焦らし切られた中は、一度沈められただけで音を立てて締まった。上側の壁を腹で押し上げられると、声が言葉の形をやめる。二度目の抽送で、私は目を閉じたまま、彼女の名前を叫んで果てた。
達している最中も、耳元の声は止まらなかった。「まだ言ってる」「もう一回言って」。中がまだ収縮しているのに、その上から言葉を重ねられて、二度目が一度目の終わる前に来た。声だけで昂ぶらされ、指一本で終わらされる。こんな崩れ方があるなんて、この夜まで知らなかった。
目を開けると、彼女は汗で額に髪を貼りつかせて、私を覗き込んでいた。
「ずるい」
「でしょう」
彼女は満足そうに笑って、また耳に口を寄せた。「次は、あなたが喋る番。わたしを、声だけでイかせて」
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包まれたい耳で感じたい密着していたい
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今夜のものを見るこの物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。