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独占されたい包まれたい従いたい
読んでいたところから開きました
「今日は口だけ。あなたは何もしないで。手も、腰も、動かさない」
ルールを決めたのは私だった。彼はソファに座って、両手を背もたれに預けて、私を見下ろす格好になる。見下ろされているのに、主導権はこちらにある。この矛盾が、やってみたかったことの正体だった。
速度も、深さも、休憩も、ぜんぶ私が決める。彼にできるのは、声を出すことだけ。
ゆっくり始めた。わざと、じれったいくらいに。
舌先だけを使って、根元から先まで、時間をかけて辿る。彼はすぐに腰を動かしたがった。その気配がするたび、私は口を離して、下から見上げた。
「動かない約束」
「……きつい、それ」
「知ってる」
自分の声が、いつもより低いことに気づいていた。膝をついているのに、命令する側の声。彼の顔が困って、蕩けて、また困る。その変化を下から眺めるのは、思っていたよりずっと、気分が良かった。奉仕しているだけの私の脚のあいだが、勝手に潤んで、太ももの内側まで垂れていた。
再開すると、彼の呼吸がすぐに乱れた。根元まで深く咥えて、頬をすぼめて、わざとじゅぷじゅぷ音を立てる。喉の奥まで迎えて、そこで止めて、彼の腰が浮くのを確かめてから引く。抜くときに唾が糸を引いて、それを彼に見せつけた。恥ずかしさは最初の数分で消えて、そのあとは道具になった。舌と、喉と、時々の停止。三つだけの道具で、彼をどこまで追い詰められるかの実験。
「出そう」と言われるたびに口を離した。三回目で、彼は自分から腰を引くのをやめた。諦めた顔だった。その顔が見たかったのだと、そのとき気づいた。
亀頭の裏だけを舌先で嬲って、根元は手で扱く。彼が達きそうになる、その一番手前で、ぜんぶ口から離して手も止める。宙に放り出された彼が、腰を浮かせかけて、ルールを思い出して、止まる。その我慢する顔が、たまらなかった。私はそのあいだ、片手で自分のクリを触っていた。
「今、どんな気持ち?」口を離して、訊いた。
「……どんな、って」
「言葉にして。言えたら、続き」
彼が絞り出した言葉は、語彙としてはめちゃくちゃで、本音の温度だけがあった。それを聞きながら、私の内側が同じ温度になっているのを知った。
限界が近いのは、教えられなくても分かった。張り詰め方も、息の詰まり方も。
「お願い、が聞きたいな」
我ながら意地が悪いと思った。でも彼は言った。ちゃんと、お願いの形で。二十七年生きてきて、人からもらった言葉のなかで、あれが一番正直だった。言い終えるのを待って、私は今夜で一番激しく、彼を追い詰めた。
最後まで、約束どおり彼は何もしなかった。何もしないことが、あんなに雄弁だとは知らなかった。握りしめた背もたれと、天井を仰いだ喉と、私の名前。射精しているあいだも喉の奥で咥えたまま、脈打つのを全部数えた。彼の全部を口で受け止めて、下から見上げたまま、飲み込んだ。飲み込むところを、最後まで見せた。
「次は、俺が決める番でいい?」
「いいよ。ルールは先に聞くけど」
「今日ので分かった。決める側のほうが、たぶん大変だ」
分かってくれたなら、何よりだった。ちなみに、垂れるほど濡れたままの私を、彼が放っておくはずもなかった。お返し、と彼は私をソファに押し倒して、脚を開かせた。剥かれて、舐められて、指を入れられて、何も言えないまま二度いかされた。ルールは、そこで彼のものに変わった。
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今夜のものを見るこの物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。