彼女の指
読んでいたところから開きました
「男の人って、雑じゃない?」
そう言ったのは彼女のほうだった。
金曜の夜、彼女の部屋。ワインが二本目に入って、話が下品なほうへ落ちていったところ。私は笑って頷いた。頷きながら、これは何かの入り口だと分かっていた。
「〇〇ちゃんは、自分でするとき、どうやってる?」
「……そういうの、答えるやつ?」
「答えないなら、私が当てる」
彼女は私の手からグラスを取って、机に置いた。それだけの動作なのに、部屋の空気が変わった。
「怖かったら言って。すぐやめる」
その一言だけ聞いてから、私は目を閉じた。
* * *
最初のキスは、驚くほど柔らかかった。
唇が薄い。当たり方が軽い。男の人のキスにある「押される感じ」がない。押されないぶん、こちらから迎えにいってしまう。迎えにいったのが自分だと自覚した瞬間、顔が熱くなった。
「積極的」
「……そっちが始めたのに」
「うん。でも受け身のふり、やめたでしょ」
図星だった。私はいつも受け身のふりをする。したいことがあっても言わない。言わないまま「してもらう」形にする。そのほうが、後で何も背負わなくて済むから。
彼女には、それが最初から見えていた。
* * *
服を脱がされる速さが、男の人とまるで違った。
ホックの位置を探さない。迷わない。同じ形の下着を毎日着ている人の手つきで、私の背中から一秒でそれを外した。手際が良すぎて、笑ってしまった。笑ったところを、鎖骨に唇を当てられて止められた。
「胸、大きいね」
「……そういうの言う?」
「言う。羨ましいから」
そのあと、彼女は私の乳首を口に含んだ。舌の使い方が、経験のあるなしではなく、知っているかどうかの違いだった。強くしたら痛い場所と、強くしても平気な場所を、最初から間違えない。
「ここ、痛いよね」
「……なんで分かるの」
「私も痛いから」
同じ体を持っている、というだけのことが、こんなに不公平だとは思わなかった。
* * *
脚のあいだに手が伸びてきたとき、私は少しだけ抵抗した。
抵抗というより、儀礼的な躊躇い。彼女はそれを無視しなかった。手を止めて、私の顔を見た。
「やめる?」
「……やめないで」
はっきり言わされた。言わせるための間だった。
指が触れた瞬間、私は自分がどれだけ濡れているかを他人の指で知らされた。彼女が小さく息を吐いたのが聞こえた。その音が、どんな言葉より効いた。
そこから先は、精度が違った。
クリを直接ではなく、包皮の上から。それも、真上ではなく少し左。私が自分でするときに使う場所と、まったく同じところを、彼女は三十秒で見つけた。見つけてから、私が逃げても外さなかった。
「ここでしょ」
「……なんで」
「みんなちょっと左だから」
* * *
「イきそうになったら言って」
言えるわけがなかった。言う前に来た。
来てから、彼女は手を止めなかった。イっている最中に同じ場所を触られ続けるのが、あんなに耐えられないものだとは知らなかった。私は膝を閉じようとして、腿で彼女の手を挟んで、それでも指は止まらなかった。
「やめ、いま、むり、むり」
「知ってる。私もそこ、むり」
同じ体を持っている人は、どこが「むり」かも知っている。知ったうえで、そこを狙ってくる。逃げ方まで予測されているので、逃げるだけ無駄だった。
二度目は、口でされた。
顔を伏せられて、脚を肩に掛けられて、そこから先は言葉にならない。皮を剥いて、剥き出しのクリを表面から舐め上げる。同じ角度、同じ速さ、同じ場所。そのあいだ、中には指が二本入っていて、腹側だけを掻き続けている。飽きるほど繰り返されているのに、飽きない。飽きる前に、体のほうが限界になる。溢れたものが尻まで垂れて、シーツに染みているのが自分で分かった。
* * *
三度目のあと、彼女が顔を上げて、手の甲で口元を拭った。
その仕草に、私はもう一度反応した。
「まだいける?」
「……いけない」
「うそ。ここ、まだ動いてる」
いったばかりのクリに指を軽く当てられただけで、腰が跳ねた。跳ねたのを見られて、笑われた。恥ずかしいのに、笑われたことがまた効いて、私は自分から脚を開いた。開いたところへ、今度は三本まとめて挿れられた。締めつけても構わず掻き出されて、じゅぷじゅぷ鳴る音を聞かされながら、また噴いた。
そこから何度されたのかは、覚えていない。
覚えているのは、明け方に彼女が「ちゃんと寝て」と言って、私の髪を耳にかけたこと。その手つきが、さっきまでと同じ手だったこと。
* * *
朝、二人で普通にコーヒーを飲んだ。
「彼氏に言う?」と彼女が訊いた。私は少し考えて、首を振った。
「言わない」
「なんで」
「説明できないから」
彼女は「そうだね」と言って、それ以上訊かなかった。
駅まで一緒に歩いて、改札で別れた。手も振らなかった。次の週も、私たちは普通に会ってご飯を食べた。何も変わっていないふりを、二人でした。
ふりをしながら、私はもう、次の金曜のことを考えていた。
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読むより、見るほうが早い夜は
好みを覚えて、今夜の1本だけを出します。登録は要りません。
今夜のものを見るこの物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。





