彼女の指

女性同士クリトリス口で愛撫される

4分で読めます・1,9992026年8月30日

「男の人って、雑じゃない?」

そう言ったのは彼女のほうだった。

金曜の夜、彼女の部屋。ワインが二本目に入って、話が下品なほうへ落ちていったところ。私は笑って頷いた。頷きながら、これは何かの入り口だと分かっていた。

「〇〇ちゃんは、自分でするとき、どうやってる?」

「……そういうの、答えるやつ?」

「答えないなら、私が当てる」

彼女は私の手からグラスを取って、机に置いた。それだけの動作なのに、部屋の空気が変わった。

「怖かったら言って。すぐやめる」

その一言だけ聞いてから、私は目を閉じた。

* * *

最初のキスは、驚くほど柔らかかった。

唇が薄い。当たり方が軽い。男の人のキスにある「押される感じ」がない。押されないぶん、こちらから迎えにいってしまう。迎えにいったのが自分だと自覚した瞬間、顔が熱くなった。

「積極的」

「……そっちが始めたのに」

「うん。でも受け身のふり、やめたでしょ」

図星だった。私はいつも受け身のふりをする。したいことがあっても言わない。言わないまま「してもらう」形にする。そのほうが、後で何も背負わなくて済むから。

彼女には、それが最初から見えていた。

* * *

服を脱がされる速さが、男の人とまるで違った。

ホックの位置を探さない。迷わない。同じ形の下着を毎日着ている人の手つきで、私の背中から一秒でそれを外した。手際が良すぎて、笑ってしまった。笑ったところを、鎖骨に唇を当てられて止められた。

「胸、大きいね」

「……そういうの言う?」

「言う。羨ましいから」

そのあと、彼女は私の乳首を口に含んだ。舌の使い方が、経験のあるなしではなく、知っているかどうかの違いだった。強くしたら痛い場所と、強くしても平気な場所を、最初から間違えない。

「ここ、痛いよね」

「……なんで分かるの」

「私も痛いから」

同じ体を持っている、というだけのことが、こんなに不公平だとは思わなかった。

* * *

脚のあいだに手が伸びてきたとき、私は少しだけ抵抗した。

抵抗というより、儀礼的な躊躇い。彼女はそれを無視しなかった。手を止めて、私の顔を見た。

「やめる?」

「……やめないで」

はっきり言わされた。言わせるための間だった。

指が触れた瞬間、私は自分がどれだけ濡れているかを他人の指で知らされた。彼女が小さく息を吐いたのが聞こえた。その音が、どんな言葉より効いた。

そこから先は、精度が違った。

クリを直接ではなく、包皮の上から。それも、真上ではなく少し左。私が自分でするときに使う場所と、まったく同じところを、彼女は三十秒で見つけた。見つけてから、私が逃げても外さなかった。

「ここでしょ」

「……なんで」

「みんなちょっと左だから」

* * *

「イきそうになったら言って」

言えるわけがなかった。言う前に来た。

来てから、彼女は手を止めなかった。イっている最中に同じ場所を触られ続けるのが、あんなに耐えられないものだとは知らなかった。私は膝を閉じようとして、腿で彼女の手を挟んで、それでも指は止まらなかった。

「やめ、いま、むり、むり」

「知ってる。私もそこ、むり」

同じ体を持っている人は、どこが「むり」かも知っている。知ったうえで、そこを狙ってくる。逃げ方まで予測されているので、逃げるだけ無駄だった。

二度目は、口でされた。

顔を伏せられて、脚を肩に掛けられて、そこから先は言葉にならない。皮を剥いて、剥き出しのクリを表面から舐め上げる。同じ角度、同じ速さ、同じ場所。そのあいだ、中には指が二本入っていて、腹側だけを掻き続けている。飽きるほど繰り返されているのに、飽きない。飽きる前に、体のほうが限界になる。溢れたものが尻まで垂れて、シーツに染みているのが自分で分かった。

* * *

三度目のあと、彼女が顔を上げて、手の甲で口元を拭った。

その仕草に、私はもう一度反応した。

「まだいける?」

「……いけない」

「うそ。ここ、まだ動いてる」

いったばかりのクリに指を軽く当てられただけで、腰が跳ねた。跳ねたのを見られて、笑われた。恥ずかしいのに、笑われたことがまた効いて、私は自分から脚を開いた。開いたところへ、今度は三本まとめて挿れられた。締めつけても構わず掻き出されて、じゅぷじゅぷ鳴る音を聞かされながら、また噴いた。

そこから何度されたのかは、覚えていない。

覚えているのは、明け方に彼女が「ちゃんと寝て」と言って、私の髪を耳にかけたこと。その手つきが、さっきまでと同じ手だったこと。

* * *

朝、二人で普通にコーヒーを飲んだ。

「彼氏に言う?」と彼女が訊いた。私は少し考えて、首を振った。

「言わない」

「なんで」

「説明できないから」

彼女は「そうだね」と言って、それ以上訊かなかった。

駅まで一緒に歩いて、改札で別れた。手も振らなかった。次の週も、私たちは普通に会ってご飯を食べた。何も変わっていないふりを、二人でした。

ふりをしながら、私はもう、次の金曜のことを考えていた。


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この物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。