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独占されたい非日常感がほしい止めてほしくない
読んでいたところから開きました
「わたしが言うまで、イっちゃだめ」
タイマーを画面に出して、彼女はベッドの脇に置いた。伏せない。数字が見えるようにしてある。
「見えたほうが、つらいでしょう」
最初の十分は、余裕だった。彼女の手はゆっくりで、丁寧で、いいところで少し弱める。弱めて、また戻す。心地よくて、一時間くらい、と思った。
十八分で、その余裕が消えた。
彼女は私の反応を、こちらより正確に読んでいた。息が短くなると手が止まり、整うとまた動きはじめる。射精しそうになる、その一番手前で、必ず手を離す。宙に放り出された熱が、行き場をなくして、腰の奥で渦を巻く。
「まだ」
一度目の「まだ」は、まだ聞けた。
二十六分。半分も来ていない。
彼女の指が、また限界の縁を撫でて、離れる。反り返ったそこは先走りで濡れていて、彼女はそれを指ですくって、亀頭の縁に塗り広げた。一番弱い場所を、濡れた指の腹でゆっくり撫でられる。少し触れられただけで爆ぜそうなのに、爆ぜさせてもらえない。腰が勝手に彼女の手を追って浮く。その浅ましさを、彼女は上から満足そうに眺めている。
「戻ってきて、って言ってごらん」
「……っ、戻って、きて」
「なにを?」
言わされた。自分の口から、直接的な言葉で。言い終わると同時に、彼女の手が戻ってくる。戻ってきた瞬間の感覚は、さっきまでと別物だった。同じ強さのはずが、皮膚が三段階薄くなっていて、気持ちいいを通り越して、耐えるものになっていた。
三十四分で、言葉づかいが崩れた。敬語なんて普段使わないのに、「お願いします」と言っていた。彼女は手を止めずに、嬉しそうに笑う。
「あと一分だけ」
四十七分。一分が、それまでの四十七分と同じ長さだった。裏筋を爪の先で下から上へ辿られて、そのたびに腰が跳ねる。数字を見ていられなくて目を閉じると、「見て」と言われた。見た。48:00。放置された熱が、限界のさらに向こうで、痛いくらいに膨らんでいる。
「もう一分」
「うそ、だろ……っ」
五十三分。
彼女が「いいよ」と言った瞬間のことは、正直、あまり覚えていない。覚えているのは、五十三分ぶん溜め込んだものが、一度に抜けていく、あの、腰から下が消えるような感覚だけだ。長く焦らされたぶん、それは鋭くなくて、広くて、いつまでも終わらなかった。何度に分けて出たのか、自分でも数えられない。声が、自分のものと思えなかった。
達している最中も、彼女は手を止めなかった。出したばかりの、過敏を通り越して痛いくらいの場所を、濡れた手のまま擦り続ける。体が跳ねて逃げようとするのを、腿で押さえつけて続ける。もうイってる、と訴えても、「まだ止めてない」と。二度目は、一度目が終わる前に来て、境目が分からなかった。
終わってから、彼女はずっと背中をさすっていた。息が戻るまで、同じ速さで。
「やりすぎた?」
考えて、首を振った。
「時計、置いたのはよかった」
「でしょう。……次は、こっちが待つ番ね」
その言い方が、まったく怖くなかったと言えば、嘘になる。
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今夜のものを見るこの物語は創作です。登場する人物・団体はすべて架空で、 描かれる行為はいずれも成人どうしの合意の上のものです。